2021年05月17日

【し~なチャン便り 第19話】5月13日 ダンス、ダンス、ダンス

昔読んだ本を再び読み直す機会が増えました。たまたま手に取ったのが、村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」。「ダンス」、つまり「踊り」がキーワード。好きなキャラでもある1人(いや1匹?)「羊男」のセリフがあらためて耳に残ります。

「オドルンダヨ。オンガクノツヅクカギリ」「なぜ踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない、そんなこと考えだしたら足が停まる」

30数年前の「ハルキー(村上春樹)」ブームの中、表紙のデザインにひかれて買ってしまった本。当時は、なんだかワケが分からず、それほど感銘を受けなかったのですが、今読み直してみると「高揚感」、「ドライブ感」とでもいうか、クセになりそうな不思議な動力を感じました。「踊り」がテーマだからかなぁ…

この「ドライブ感」、興奮が続くまま、5月13日番組のテーマも「ダンス」。ゲストは劇作家、演出家、舞踊評論家、俳優…いろいろな顔を持つ山川三太さん=秋田市=です。

山川さんは’72年、演劇センター附属青山杉作記念俳優養成所に入所。’75年卒業と同時に劇団究竟頂(くきょうちょう)を結成・主宰。劇団解散後は演劇評論、舞台演出、人材育成など幅広く活動を行ってきました。そして2015年、『踊る。秋田』実行委員会の依頼により『踊る。秋田』フェスティバル・ディレクターに就任。

「秋田は、世界中のダンサーから『聖地』と呼ばれているんです。現代舞踊の草分け、石井漠(いしい・ばく、三種町出身)と独自の肉体表現である『舞踏=BUTHO』を確立した舞踏家土方巽(ひじかた・たくみ、秋田市出身)。2人の天才ダンサーを生んだ地が秋田。まさに『踊る。秋田』です」

2人の足跡を将来に伝えるとともに、秋田を「舞踊・舞踏の聖地」としてアピールしようという動きが、2014年に本県で開催された国民文化祭を機に活発化。そうしたうねりの中で、山川さんは故郷である「秋田」に深くかかわってきました。

「当時、秋田では石井、土方の名が一般の人にはそれほど知られていませんでした。そこで、まずは、土方に師事した麿赤児(まろ・あかじ)率いる舞踏集団『大駱駝艦(だいらくだかん)』を招いたんです」

2015年11月、文化会館での「大駱駝艦」公演は大成功。700人の劇場がびっしり埋まり、その多くはシニアだった、といいます。

「『なぜ、公演に?』『どうでした?』と年配の方々に聞いたら、秋田弁で話してくれたんです。『わげ(訳)わからねぇども、なんだが面白れがった』って…これでいいんですよ。うれしかったなぁ」

これまで続けてきた『踊る。秋田』公演でしたが、このコロナ禍で昨年は中止になってしまいました。「観客も作品創造の重要なパートナーであるという宿命を持つ舞台芸術にとっては、切ない状況が続いていた」(山川さん)といいます。

(し~なチャン YouTube)

今回、山川さんたちが仕掛けたのはなんと、「円形ソーシャルディスタンス劇場」。「月灯りの移動劇場(主宰・浅井信好)」が特別公演するもので、タイトルは『Peeping Garden』(5月30日、秋田拠点センターアルヴェ 秋田市民交流プラザ)。

「観客が安心して鑑賞できるニューノーマルな鑑賞形式を、という思いで創り出したもの。完璧なソーシャルディスタンスのとれる、移動劇場ですよ」

郵便受けや覗き穴のある30枚のドアが円形に配置され、観客同士が必然的にソーシャルディスタンスを保つことができるように、仕切りの設けられた個室から内部の作品をのぞき見るという、不思議な、でもワクワクする鑑賞形式。

いったい、これは…それに、このタイトルの「Peeping」って「のぞき見」のことですよね━

「のぞき見るということに注目し、観客と演者が互いの視線をより強く感じられる舞台美術を目指しました。のぞき見って、なんか面白いでしょ。そう思いませんか」

そう…思います。「のぞき見」といえば江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」、これも読み直そうかな。

『Peeping Garden』、キャッチフレーズがいいんです。紹介します。

「そのドアは決して開けてはいけません。息を潜めてそっとのぞき見るのです。月灯りの庭で不思議な遊びをしている、ちょっと変わった住人達が逃げてしまいますから。節穴や鍵穴、変わった筒、ひょっとしたら郵便受け、あなたがどのドアの前に立つかは庭の入り口の番人次第…」

あぁ、そうか。私たち観客も重要な「演者」なんですね。

 

シニア記者プロフィール

西村 修(にしむら おさむ)

元秋田魁新報記者。秋田ケーブルテレビ記者、ALL-Aアドバイザー

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