2021年07月26日

【し~なチャン便り 第29話】7月22日 「再生中」!! 若きクリエーターたち

ついに”2度目”の東京五輪が始まりました。アスリートたちの連日の熱い戦いに心が揺さぶられます。

1度目、つまり日本で初めて東京五輪が開催されたのは1964年10月。この年に合わせて、我が家ではテレビを購入しました。「東京五輪を見る」ために、です。出始めのテレビは超高価でした。父親はまさに苦渋の決断だった、でしょうね。

我が家はカラーテレビではありませんでした。テレビのモノクロ映像を頭の中でカラー化し、空想を膨らませながらの視聴。でも、表彰台に上がる「日の丸」の「赤」だけは特別に色がついていたような気もします。そんなはずはない、か…

実はこの1964年、私が愛するテレビアニメ、動く「鉄腕アトム」に出会えた年でもあるんです。

「鉄腕アトム」の作者・手塚治虫さんが虫プロダクションという映像会社を立ち上げ、つくり上げた日本初の30分テレビアニメシリーズ。1963年1月1日から放送開始でしたが、秋田で放送が始まり、私が「アトム」をテレビで見たのは1964年秋、つまり東京五輪と同時期だった、と記憶しています。衝撃でした、動くアトム…もちろんモノクロでしたから、私たちは空想力で補いました。

広辞苑などによれば、アニメーションとは「絵や人形などを少しずつ位置・形をずらして一コマずつ撮影し、映写すると動いているように見える映画」とあります。1964年当時、アニメという言葉は一般的ではなく、私たち昭和の少年は「漫画映画」と呼んでいました。

この時代、「『漫画映画』は子供向け」ということで、大人は当初、見向きもしませんでした。ただ、この「動くアトム」に続き、「鉄人28号」「8マン」そして再び手塚さんによるフルカラーの「ジャングル大帝」が放映され、社会の空気が変わります。

「子供向け」とされた「漫画映画」はアニメと呼ばれ、ファン層が大人にまで広がります。今では日本の代表的文化、「クールジャパン」の象徴として挙げられ、世界的に注目されています。「アトム時代」からの「漫画映画」ファンとして誇らしい気持ちです。

今、若きクリエーターたちはどんなアニメを目指しているんだろう? そんな疑問を持っていた中で、「アニメの今」を強く印象付ける「作品展」がありました。

キャッチフレーズは「Now Playing」~。秋田市中通の秋田公立美術大学サテライトセンター(駅前・フォンテAKITA)で開催された同大学生たち10人の「アニメーション作品展」です。

コロナ禍で旅行も帰省もできない中で「今までにはない場所に行けたら」と考えて作った映像作品、学生から社会人になる自分を表現した映像作品━など個性豊かな作品が、大小さまざまな形のスクリーンで放映されていました。

どんな思いでつくったのか、お話を聴きたくて、作者の皆さんに「し~なチャン」スタジオに来ていただきました。高橋鈴奈さん(ビジュアルアーツ専攻4年)、堀江侑加さん(同3年)、杉澤奈津子(アーツ&ルーツ専攻4年)さんの3人です。


「『Now Playing』は『再生中』という意味です。現在進行形(ing)で自分たちの『現在』を伝えたい、という思いが込められています」。まず高橋さん=羽後町出身=が3人を代表してそう語ってくれました。

高橋さんは『オゾンホール』というタイトルで出品。その作品説明文にはこうあります。

「服で覆っていても、クリームを塗っても彼らは皮膚に侵入し、蓄積していく。不愉快で理解しがたい、でも時に心地よい 彼らをありのまま受け入れるには どうすればよいのだろうか」

━手描きアニメがいい感じです。そして作品の前に、何気なく置かれたヘッドホンは?

「絵に合わせた、繊細な音を聞き取ってもらいたくて、よく聞こえるヘッドホンを置きました。視聴者それぞれが感じるもの、感覚を楽しんでいただければ…」(高橋さん)

なるほど、コロナ、不安、ワクチン、そして「共生」…いろいろ考えされられました。それが狙いだったんですね。

━2人目の堀江さん=神奈川県出身=のタイトルは「牛乳イッポン良候(ヨーソロー)!」。「良候」って「前へ」という「操舵号令」のことですよね?

「そうです。キャッチーな響きを持つ言葉を使いたくて、見つけ出してきました。私は牛乳が大好きなんで、2つ合わせて『良候牛乳』というネーミングで登場させてます。仲間とポジティブさがあれば何でも乗り越えられる、という思いでつくったんです」(堀江さん)

堀江さんの映像を見ていると、元気が出てきます。明るくて、懐かしくて、何よりポジティブ…「イッポン良候」という言葉が「ニッポン 前へ」、つまり今の私たち日本人への応援歌に思えてきました。

━最後に、杉澤奈津子さん。出身は…会場でいただいたパンフのプロフィールには、なんと「木星」とありますが?

「すみません、思い付きで…。ほんとは青森県です。木星と似たようなところですけど」と杉澤さん。

“不思議キャラ”の杉澤さんの作品は「恥実験2」。会場の端の端(はじ?)。注意しなければ見過ごしてしまいそうなところに置かれていました。何やら不思議な作品(詳細はyoutubeを…)。

「『どこまで隠せば恥ずかしくないか』の実験です。
あまりまじまじと作品を見ないでください。恥ずかしいので…」(杉澤さん)

昭和の少年たちに元気をくれた1964年東京五輪と「動くアトム」。そして今、再び東京五輪があり、一方で個性豊かな「Now Playing」の若きクリエーターたちが出てきています。

アニメはやっぱり私たちに元気をくれます。

みんな「良候」!! これからも頑張って!!

シニア記者プロフィール

西村 修(にしむら おさむ)

元秋田魁新報記者。秋田ケーブルテレビ記者、ALL-Aアドバイザー

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