2021年02月03日

【し~なチャン便り 第2話】1月14日 元消防士が魅せる! 「ミニ纏(まとい)」

ゲストは秋田市川尻の小物作家渡部顕さん=まとい工房 南天=。渡部さんは元・同市消防本部救急救命士。病気のため2015年に早期退職した後、趣味で江戸時代の火消しが使った「纏(まとい)」のミニチュア作りを本格的に始めたんです。

「纏」とは、江戸時代に町火消の各組が用いた旗印の一種。各組により様々な意匠が凝らしてあります。渡部さんは在職中だった10年以上前から、この纏のミニチュアを制作。厚紙や細い木を材料に、木工用接着剤や糸を使って組み立てています。近年は和風家屋のミニチュアも制作し、インターネットや秋田市内の店舗などで販売しています。

渡部さんの作品の数々をスタジオに持ち込んでもらいました。

ミニチュアは高さ3・5センチから大きいものだと10センチほど。特に私が魅せられたのは、纏上部の裾部分にある「ばれん」。均等に切れ込みを入れ、きれいに裾広がりになっています。美しい…

(し~なチャン 番組より)

 実は私。前から渡部さんの作品は気になっていて、昨年末、渡部さんが主宰した「ミニ纏製作教室」に参加したんです。このとき制作したのはミニ纏と、ミニ凧。いずれも正月にふさわしい縁起物です。初体験ながら渡部さんの丁寧な指導の下、ようやく完成。渡部さんの出来とはレベルが違いますが、自分のミニ纏です。うれしかったなあ~

(制作・西村)

 番組では、渡部さんと「纏」の歴史、さらに「江戸火消し」について話が弾みました。
「町火消が組の目印として用いたのが纏です。江戸時代って火災が多く、ここで命を懸けて人々を守ったのが町火消し。江戸は長屋が多く、一度火が回れば大きくな被害になります。当時は水での消火ではなく、建物を壊して延焼を防ぐ『破壊消火』が中心。火消しの中でも、纏持ちは屋根に上って纏を振る。『ここで火の勢いを食い止めろ』という目印として活躍したんです」と渡部さん。まさに「火事とけんかは江戸の華 そのまた華は町火消し」ですね。

私も調べてみました。
消防組織としての火消は、江戸においては江戸幕府により、頻発する火事に対応する防火・消火制度として定められたようです。当時、江戸では3系統の消防組織がありました。渡部さんの纏を持つ町人たちの町火消しのほかに、幕府直轄で旗本が担当した定火消(じょうびけし)、大名に課役として命じられた大名火消(だいみょうびけし)です。町火消しに対して、定火消しと大名火消しは「武家火消し」といわれました。
県立公文書館にある古文書「佐竹藩御火消御合印御本図帳」には、佐竹藩江戸屋敷の「消火チーム」のことが図柄とともに記載されています。佐竹の紋のついた「火消装束」、「纏」を手に活躍した「佐竹藩 大名火消し」の姿は、江戸っ子たちにもカッコよく映ったんでしょうね。

渡部さんの新作は、江戸火消し64組のミニ纏。秋田市山王の北都銀行山王支店で1月末まで展示され、人気を集めました。江戸火消しは、隅田川を挟んで「いろは四十八組」と「本所深川十六組」の二つから構成されるとのことで、「完成まで約6カ月かかった。精密に再現できた」と渡部さんは話してくれました。

纏は災いを防ぎ、上り調子の運気を願う縁起物でもあります。纏を振ったときの形は「裾広がり」、提灯は「前を照らす」、梯子は「上り調子の運気」、とび口は「困難を切り立つ」。渡部さんによれば、江戸の火消道具には「縁起物」としての意味合いが一つひとつ込められています。
火消したちの勇敢な姿、特に振りかざした纏は人々にとって頼もしい存在だったでしょうね。

記者プロフィール

西村 修(にしむら おさむ)

元秋田魁新報記者、秋田ケーブルテレビ記者、ALL-Aアドバイザー

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